今回も母方の祖母の話です。
祖母は大層な働き者だった、という話を以前(祖母のこと(1))書きましたが、戦時中か戦後か分かりませんが、祖母は闇市で商売をしたことがあったそうです。
ずっとなのか、その時だけなのかは分かりません。
確かめようにももう覚えてる人もいませんし・・・
ただ、母から「こんなことがあった」と聞いたことがあるので、そのことを書こうと思います。
当時の母の年齢から、おそらく広島の竹原に疎開していた頃のことだと思いますが、祖母は「塩あん」のおまんじゅうを作って闇市に売りに行ったことがあるそうです。
「塩あん」とは、物のない時代のことで、小豆なのか他の豆類なのかは分かりませんが、それであんこを炊いて、砂糖の代わりに塩で味付けをしたものだそうです。
「え、甘くないあんこなんておいしいの?」
と聞いたら母が、
「物のない時代だったから、そんなおまんじゅうでもよく売れたらしい」
と教えてくれました。
そうして儲けたお金で祖母は母に「豚革の靴」を買ってくれたんだそうです。
もちろん買ったのは闇市ででしょうねえ。
広島の親類(一番上のおばさんの嫁ぎ先)に疎開させてもらってとりあえず食べる物はなんとか食べられる中、そういう物はやはり不足していたんでしょうね。
祖父は神戸に残って仕事をしていたけれど、その時のお給料とか仕送りとかがどうなってるかまでは分かりません。
ただ、「ぜいたく品」を買うにはお金が足りなかったのじゃないか、と思われます。
「買ってもらってすごくうれしかった」
と母は言ってました。
当時は本当に物がなく、紙製の靴とかもあったと聞いたような気が・・・
そんな中、本物の豚革の靴、それはうれしかったことでしょう。
他の兄弟姉妹にも何かを買ったのか、その時は母だけだったのかも分かりませんが、とにかく新しい靴、ものすごくうれしかったようで、何回もその話を聞きました。
子供の頃に聞いた時は「へ~」ぐらいだったんですが、大人になっていくにしたがって「おばあちゃんすごいなあ」と思うようになりました。
闇市なんて怖いですよ、どんな人がいるか分からないし。
そんな中、神戸から来て親類に身を寄せながら、手に入る材料を工夫して食べさせるだけじゃなく、お金儲けをして子供に少しでも不自由をかけないようにしてやりたい、そう思ったんでしょうね。
一応は奥様で、戦争がなくて神戸にいたら、そんな商売しなくて済むような人が、よく思いついたと思います。
そんな祖母を、私はすごく尊敬しています。