母親の疎開時代の汽車にまつわる話をいくつか書きました。
それでもう一つ思い出した話があります。
正確には汽車は直接関係ないです。
汽車を降りて家に帰るまでの間の出来事、通学路での出来事ですが、汽車を降りた時の母の気持ちを考えると、なんと言っていいものやら・・・(笑)
「田舎のニュースは早い~ひよこの聞き語り(41)」で、母が住んでいた家の位置が「駅と駅の間」と書きました。
家の位置を通り越し、次の駅で降りて戻るわけです。
その戻る道ですが、田舎なのでもちろんさびしい道です。
同じ汽車で降りて同じ方向に帰る人がいたらお連れさんがいるわけですが、いなかったら一人でさびしい道を歩いて帰ることになります。
途中、竹林を抜けると一軒の家が見えてきます。
ある時、その家のおばあさんが亡くなりました。
知っているおばあさんではありますが、母とは親戚でもないし、普通に学校に行き、普通に授業を受け、普通に帰ってきました。
駅を出て、いつもの道をいつものように帰ってきたのはもう夕方だったらしいです。
女学校の授業が終わって帰ってくるんですから、まあそのぐらいにはなるでしょうね。
竹やぶを抜け、いつものようにその一軒の家が見えてきた時、誰かが座っているのが見えてきました。
うちの母親は結構きつい近視でした。
多分、その頃はもう近視だったと思うんですが、メガネをかけていたかどうかはではちょっと分かりません。
分かりませんが、遠くがはっきり見えてはいなかったと思います。
誰かが座っているのは分かったけど、誰かは分かりません。
どんどん歩いて家に近づき、その人が誰か分かって腰を抜かさんばかりに驚き、転がるように走ってその場から逃げました!
座っていたのは、亡くなったと聞いていたはずのおばあさん!!!
これは怖い!
竹やぶを抜けて、ぼんやりと見えてきたのが亡くなったと聞いたはずのおばあさん!
私だったら泣きながら腰を抜かすか気絶するかも。
家にたどり着き、亡くなったはずのおばあさんが!と言って、理由が分かりました。
当時、今と違って亡くなった方を入れるのは「座棺」と言って、時代劇とかで見る桶のような丸い棺だったんです。
その棺に入れるのに、亡くなったおばあさんを座らせて布団で巻いたんですね。
死後硬直が始まる前に、そうして型をつけておいたんだそうです。
母が見たのは、その姿だったんですね。
いやいやいや、実物の遺体も怖いって(笑)
なんで外から見えるところにそんな形で(笑)
それからしばらくの間、とても一人では帰れず、誰だったかな、誰か知ってる方に一緒に帰ってもらうようになったらしいです。
うん、そりゃそうだ(笑)
その道しかなくて仕方なかったらしいけど、私だったら学校行けなくなってたかも知れません(笑)